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温泉の純化(4)

■ふたたび、温泉とは何なのか?
 
 このシリーズで私が温泉の成分からpH、酸化還元電位などの指標や源泉かけ流しにまで疑問を投げかけているかのような文章を書いたことで「望月さんは温泉好きじゃなかったの?」と違和感を感じた方もいらっしゃるかも知れません。
 
私が言いたかったのは温泉を否定することではなく、「温泉の価値とは、湧出量や温度、成分分析表、かけ流しかどうかといったことだけで判断できるものではないのではないか。」ということなのです。
 
人間の科学力はまだまだ発展途上ですし、私たちが常識と思っていることは非常に偏った狭いものでしかありません。非科学的、トンデモ、オカルトといった扱いを受けながらも一部の人に真剣に研究されている分野がたくさんあり、その中には温泉の力と密接に関係があるのではないかと思われるものがあります。
 
今私たちの目に見えているもの、知識で理解できるものがすべてではないと言う事に対して、もう少し謙虚にならなければいけないと思うのです。
 
 さらに言うと、例えば人の価値は足の長さや学校の偏差値だけで判断することはできません。
 
それと同じように、源泉はひとつひとつが異なる個性を持ってますから、湧出地の周辺環境も含めて、単純な判断基準で優劣を決めることはでませんし、同じ扱い(施設計画や設備設計)をできるはずがありません。その温泉がもっとも良い状態で最大限に魅力を発揮していることこそが大切だと思うのです。
 
せっかくの地球の恵みを活かそうという発想に乏しく、何の工夫もなしに加水や濾過循環、塩素殺菌で台無しにしてしまうのはいけませんが、かといって源泉かけ流しという信仰に振り回されて安全衛生を損なうようなことがあっても本末転倒です。
 
温泉とは、源泉ひとつひとつが素晴らしい個性をもっている地球の恵みであり、その個性と真摯に向き合えば素晴らしい価値を発揮するものなのです。
 
■もっとも良い状態の温泉とは
 
 言うまでもなく、温泉は湧きたてをできるだけ新鮮な状態で、手を加えずに提供することが理想でしょう。
 
そのためには通りいっぺんの浴室プランや設備設計でいい筈はありません。湯量や温度、泉質を前提に、客数予測や投資採算性も考慮した上で最適な提供方法が検討されなければなりません。
 
 以前、宮城県の峩々温泉にヒントをもらい、大分県の長湯温泉で「底入れ底出し方式」という給排水設備を提案したことがあります。
 
一般的に吐水口が浴槽水面よりも上にあってジャバジャバと給湯する方法は見栄えは良いのですが、大切な成分の酸化が進んでしまったり、炭酸が振動によってどんどんお湯から抜けてしまいます。長湯温泉は炭酸泉ですから、見栄えよりも泉質を大切に考え、浴槽の底から給湯する方式としました。
 
また、源泉かけ流しの排水は浴槽の縁からオーバーフローさせるのが一般的ですが、その方式だと浴槽の水面近くにある温度が高くて新鮮な湯から排水してしまうことになり、底の方には温度の下がった古い湯がいつまでも滞留することになります。この対策として、浴槽の底に排水口を設けて排水パイプを水面の高さまで延長し、そこからオーバーフロー排水できるようにしました。
 
この方法だと非加熱でも源泉温度を維持しやすく、お湯の鮮度も良好に保てる効果があるだけでなく、浴槽の底の方にある汚れも排出できます。お湯の汚れには①湯の表面に浮く汚れ、②湯に浮遊する汚れ、③底に沈む汚れ、そして④湯の中に溶け込む汚れがあります。一般的な浴槽の縁からのオーバーフロー方式だと、①湯の表面に浮く汚ればかりを排水していて、それ以外の②③④の汚れがなかなか排出できないのですが、底入れ底出し方式を併用すれば、すべての汚れを排出することが可能となるのです。

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細かい話になりましたが、このように源泉の良さや個性を活かし最適な状態で提供しようと思えば、個別の条件に合わせたさまざまな工夫が出てくるのです。その工夫が源泉の個性と組み合わさって、世界にふたつとない温泉ができあがるのではないでしょうか。
 
結果として、必ずしも大きな温泉浴槽が何種類もできるとは限らないでしょう。それでいいのです。
 
井水や水道水を沸かした浴槽があっても、「温熱作用」「水圧作用」「浮力作用」は得られます。塩や重曹をはじめ、何かを入れればその成分による「薬理効果」は得られますし、環境づくりを工夫すれば「転地効果」も得られます。そこに温泉の個性と工夫が加わることで素晴らしい温泉施設となっていくのです。
 
さらに言うと、温泉の価値を入浴だけでなく「飲泉」や「温泉料理」「温泉化粧水」などに可能性を拡げて答えを求めることになるかも知れません。
 
以前ドイツのBaden-Badenに行った時、街中の随所に飲泉所が設けられているのを見ました。日本と比べて、源泉をそのまま飲んで体内に取り入れることの価値を重視していることが分かります。
 
飲泉なら湯量や温度が乏しくても、加水や濾過循環、塩素殺菌などせずに新鮮な源泉が提供可能なのですから、もっと深く研究されてたくさんの飲泉場が登場するようになって欲しいと思っています。

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■温泉事業に携わる方にお願いしたいこと
 
 繰り返しになりますが、温泉はそのひとつひとつが素晴らしい個性をもっている地球の恵みです。
 
世界にたったひとつの源泉は、言わば自分の子供と一緒なのです。
 
その個性と謙虚に向き合い、情熱をかけて大切にじっくりと育ててください。きっと世のため人のために役立つ素晴らしい価値を発揮するようになります。
 
源泉を所有しているということは、それだけで素晴らしいことなのです。
 
 

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