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温泉の純化(2)

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  最近、温泉入浴を勧めるマスコミ記事を読んでいたところ、温泉浴によって得られる大きな作用として「温熱作用」「水圧作用」「浮力作用」の3つが挙げられていました。よく考えてみると、これらの作用は必ずしも温泉水でなければ得られないものではなく、沸かした井戸水でも水道水でも同様の作用は得られる筈です。
 
転地効果や薬理効果も含めた複雑な相乗効果、という説もありますが、それも前回述べたように必ずしも天然温泉でなければならない理由とまでは言えません。
 
このように「温泉とは何なのか?」という本質的な疑問に対して合理的な説明ができていないというのが実際のところであり、それゆえに、世界に誇れるはずの日本の温泉文化がおかしな方向へ迷い込んでしまっているのではないでしょうか。
 
「温泉とは何なのか?」という素朴な疑問に対して、いろいろな角度から考えてみたいと思います。
 
■温泉と酸化還元電位
 
 温泉の性質を測る指標として、酸化還元電位(ORP)を重視する考え方があります。パキスタンの長寿の村「フンザの水」をはじめ、世界中で名水と呼ばれる水に酸化還元電位の低い事例が多く見られることから、酸化還元電位が低い(還元力が高い)水が良い水であるということです。
 
実際温泉水の酸化還元電位を測定すると、同じ源泉でも濾過循環、塩素殺菌した温泉水は酸化還元電位が高くなってしまいます。
 
しかし、観賞魚の水質管理を見れば分かるように、酸化還元電位が低ければ低いほど人間の身体にとって良い水というほど単純なものでもないようです。人為的に酸化還元電位を下げる方法もいくつもあります。
 
成分やpHと同じことで、今のところ酸化還元電位もその水の性質を示すひとつの指標として捉えた方が良さそうです。
 
■源泉かけ流しの希少性
 
 最近の温浴施設では小さな浴槽ひとつだけを源泉かけ流しとして、あとは濾過循環浴槽とする方法をよく見かけるようになりました。
 
例えば3人~4人が肩を寄せ合って入るような2m×2mの小さな浴槽があったとしましょう。水深60cmなら、2.4tの湯量です。
 
この浴槽に1日何百人も入浴するとしたら、濾過循環浴槽の場合は、保健所の指導に従い2.4tの湯量が1時間に2ターン以上循環するように濾過機を運転します。
 
源泉かけ流しの場合は「1時間に2ターン」といった明確な基準はありませんが、もし源泉かけ流し浴槽で濾過循環と同等の水準で浴槽の汚れを排出しようとしたら、新しい湯を2.4t×2=4.8t投入するということになり、毎分に換算すると80リットルとなります。
 
ひとつの源泉の湧出量は毎分数十リットルから数万リットルまで様々ですが、普通の水道の蛇口を全開にして毎分20リットルくらいですから、毎分80リットルという湯量は蛇口4つを全開にして注ぐということになり、馬鹿にならない量です。
 
もしこの状態で毎日14時間営業すると、この源泉かけ流し浴槽ひとつだけで月間の排水量は2000tを越えます。下水道料金の考え方は地域によって様々ですが、仮にこの排水をまるごと下水道に排水し、1立米あたり400円の下水道料金なら2000t×400円=月間80万円となります。
 
男女浴室それぞれに同じサイズの源泉かけ流し浴槽をつくればその下水道料金だけで月間160万円ということです。そして、ここには温泉の加温に必要なエネルギーコストは含まれておりませんので、もし源泉温度が低ければ燃料代も加味しなければなりません。
 
もちろん、入浴者数が少なければこのように膨大な量の新湯を投入しなくても衛生的には問題ありません。しかし、入浴者数が少ない=売上が少ない状態しか望めないとしたら、誰が大きな投資をして温泉を掘削したり、温浴施設を建築したりするでしょうか。
 
ちょっと乱暴な計算だったかも知れませんが、たくさんの人が入浴する以上は、天然温泉を源泉かけ流しにする難しさをざっくりイメージしていただけるのではないでしょうか。
 
市街地で大深度の温泉掘削をして、大浴場を作る。それには億単位の費用がかかります。事業として「あこがれの天然温泉が近くで気軽に」ということを成立させるためには一定以上の事業規模=集客をすることが前提となりますので、たくさんの人が入浴することになります。
 
たくさんの入浴客に対してよほど源泉の湧出量や温度、そして排水環境に恵まれない限り、大きな浴槽は濾過循環消毒せざるを得ないし、小さい浴槽だけを源泉かけ流しにするとしてもその安全衛生状態を理想的に保つのは容易なことではないのです。
 
入浴者数に見合った量の新鮮な源泉が投入され、そしてそのまま排水している本物の源泉かけ流しは大変貴重な存在であり、それは本来簡単には手に入りません。山奥の秘湯まで出向くか、市街地であれば奇跡的に条件が揃わない限り、新鮮なお湯で満たされた良質の源泉かけ流しを楽しむことはなかなか難しいのです。
(続く) 

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