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温泉の純化(1)

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■温泉とは何なのか?
 
 先日おふろ学校で講演をさせていただいた際に、これからの温浴を考える上でのキーワードとして、「サウナの進化」という言葉と並べて「温泉の純化」という言葉を初めて使いました。
 
 温浴施設の新規開発や事業再生のコンサルティングという仕事をしながら、これまで何本もの源泉の掘削に携わったり、また数えきれないくらいたくさんの温泉に入浴してきましたが、実を申し上げますと「温泉とは何なのか?」という基本的なことについてずっと釈然としない思いを抱えていました。
 
昭和23年に制定された温泉法には、温度が摂氏25度以上か、成分が一定基準以上含まれていれば「天然温泉」である、という定義があります。
 
それはボイラーで加温したり、入浴剤を入れた水道水と何が違うのでしょうか?温度や成分によって温泉という判定なら、それが天然由来か人の手が加わっているかには結果的に大差ないのではないかと思えるのです。
 
よく温泉の評価として、成分分析表の数値を見て「○○がたくさん含まれているからスゴイ温泉」といったことを言いますが、そんなに成分が濃い温泉がありがたいなら、食塩でも重曹でも好きなだけ入れたらいい、と思ってしまうのです。ひねくれているかも知れませんが、成分分析表の数値は温泉の価値をそのまま表してはいないような気がします。
 
温泉の価値を否定しているのではありません。鮮度の良い素晴らしい温泉に入浴した時に感じる全身の細胞が喜ぶような感覚や、身体に活力が蘇る感覚は実感としてよく理解しているつもりです。
 
その実感と、○○の成分が何mg、とかpHがいくつ、といった数値にはどうしても関連性が希薄なように思えてならないのです。
 
 古くから湯治で疲れや傷病を癒すという習慣を持っていた日本人には、「温泉入浴」に対するあこがれや信奉があります。
 
掘削技術の進歩によって、市街地でも温泉を湧出させることができるようになり、「天然温泉」の看板を掲げることで温浴施設がたくさんの入浴客を集めてきたのは事実です。近年の温浴ブームを後押しした大きな要因が「あこがれの天然温泉が近くにあって気軽に行ける」ということであったと言ってもよいでしょう。
 
しかし、天然温泉と呼ぶ根拠が上記のように「温度か、成分か」でしかなかったこともあって、濾過循環と塩素殺菌で同じお湯を何日も使い続ける技術が普及しました。このことが温浴施設の行き過ぎた儲け主義であるかのように批判されることがありますが、そこにはちょっと誤解があります。
 
人が入浴すれば湯が汚れます。
 
温泉にたくさんの人を入浴させるためには、汚れがひどくならないように常時新しいお湯を投入しなければなりませんが、一日に数百人から時には千人を超えるような客数が入浴する温浴施設でお湯の衛生状態を保つためには、大変な量の新湯を投入する必要があります。
 
それだけの湧出量を持つ源泉は限られていますし、源泉能力はあったとしても地域によっては汲み上げ量の規制があったり、排水に対する規制もあります。
 
また仮に充分な湧出量があったとしても源泉の温度が低ければ昇温にエネルギーが必要となり、せっかく燃料を使って温めたそのお湯をどんどん捨てることになってランニングコストがかかります。さらに新湯投入分だけ排水するとなると、下水道にも莫大なランニングコストがかかってしまうことがあります。
 
また、一般的に浴槽水の衛生状態を測定する方法として残留塩素濃度が用いられるため、源泉かけ流しであっても残留塩素濃度を規定値に保たなければならないという指導を受けることが少なくないのです。
 
このように公衆浴場が天然温泉を提供するにあたっては、個別の源泉の湧出量や湧出温度、排水環境、管轄する行政の方針にも左右されますが、一般論として、経営あるいは安全衛生、そして法令遵守の立場からは濾過循環・加温・塩素消毒を避けるのは非常に難しいことなのです。
 
誠実に真剣に温泉施設経営に取り組んでいる筈なのに、「儲け主義だから同じお湯を使い回し」とか、「湯づかいが分かってない」とか批判されてしまうのは悲しいことです。
 
しかし、温泉愛好家が温泉の鮮度を重視し、濾過循環・加温・加水・塩素消毒を否定したい気持ちも実感としてよく分かります。
 
温泉にまつわるストレスが生じている原因は温泉事業者や温泉愛好家にあるのではなく、温泉法の定義あるいは「温泉とは何なのか?」というこれまでの認識そのものにあるように思えてならないのです。
(続く)
 

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